大工・漆塗り・錺金具・彫刻・彩色・人形・飾り幕等多様な職人達の手仕事による職人芸が集結したものが山車であります。組み立てる事によって一台の山車が生まれます。
評価をしていただきます。
1.計画・設計
計画・・・・・大勢の方に見て頂く山車ですので、姿・彩・細部の装飾に 釣り合いが
とれているか?意匠的に優れているか?等を含め最初の段階で緻密な
計画を行います。
2.お見積
新築工事の概要を説明しお見積書を提出させて頂きます。
3.ご契約
工期・工程・保険・お支払い方法の取り決めをし契約となります。
4.木工事
木工事の中で大事なのは大工職人の技があります。
長年培った経験と技術が無ければ評価を頂く事は出来ません。
山車の要素の中に解体・組立と言う原則があります。
この事を可能にするには各部材の仕口が解体・組立と言う事を前提に作られていなければいけません。
木材・・・・・檜・けや木等の乾燥材とし「あて」や「欠点」のない良材を使用します。
現寸図・・・・重要な箇所は現寸図を引き、形板を作成し部材を加工します。
加工・・・・・解体・組立から容易に出来るよう各仕口を決定し、社寺建築の技法に
照らして工作します。
仮組立・・・・各部品は部材として一つにまとめられ、仮組立をし仕口を調整したのち
欠の工程へと運ばれます。
5.漆塗り・金箔押
漆は、高温多湿ほど早く乾燥するので梅雨時期が一番いい時期に当たります。
大きく分けて、木地直し・下地・塗りの3工程に分けられます。
表面を炭で研いで仕上げる為、平滑な表面は鏡の様な光沢のある仕上がりになります。注意する事は、必ず木綿の手袋を着用して取り扱う事です。絶対に素手では触れません。指紋が手油として付着するからです。
太陽光の紫外線によって表面の艶は少しずつ失います。
尚、皮膚の弱い方は、かぶれるので取り扱いには気をつけて下さい。
木地固め・・・刻苧で素地を調整した後、木地全体に生漆を塗り木地を固めます。
大地・・・・・布着せ・地付け・錆付けはヘラと刷毛で下地を付けていきます。
地研ぎ・錆研ぎは砥石で平らに水研ぎします。
中塗り・・・・黒・朱等の中塗り漆を塗り、乾燥後炭を使って水研ぎをします。
上塗り・・・・埃等が付かぬ様に注意をしながら上塗り漆で塗り上げるます。
金箔押・・・・箔下漆を塗りその上から金箔を押しでいきます。
6.錺金具
金色に輝く錺金具は、見る人に金を連想させ、昔から山車の装飾の重要な要素を占めております。銅の地金に鏨で文様が刻み込まれています。魚子を打ち表面を磨いたのち、金の鍍金で仕上げになります。要所には、穴が開いており、鋲を打ち取り付けます。
錺金具・・・・名称・大きさ・負数を記入した明細書を作成します。
形状・文様等、錺金具の意匠をデザインします。
加工・・・・・型取りを銅地金に唐草模様を鏨で正確に刻み周囲の隙間は魚子で埋めます。
仕上げは、本金メッキ仕上げ、又は金箔押となります。
7.彫刻
江戸の末期頃から社寺建築に彫刻を多用する事が流れとしてあり、山車も彫刻が装飾の中心として位置づけられました。中でも唐獅子や龍の彫刻は人気が高かった様です。
その他、題材としては中国の故事・日本神話・長寿・福地等に関する物があります。
先人達の優れた作品が存在している現在、昨今の祭りの髏キと共に彫刻に興味を持つ方が増えてきた様な気がします。先人達の作品に大いに刺激をを受け、益々よい作品が生まれてくる事を望みます。
下絵・・・・・取り付ける位置ごとに図案を決定し下絵を作成します。
彫刻・・・・・大絵を材に写しながらドリルで彫抜く箇所に穴を開けながら一気に粗彫りをし
仕上げへと掘り進めていきます。
8.彩色
彫刻に色を付けるという根気のいる作業ですので女性の方が向いている仕事です。
膠を溶かした溶液に顔料を混ぜ塗っていきますので膠の濃度が重要な管理となります。濃度を間違えると下地から剥がれてしまいます。
また、夏場等に長く放置しておきますと膠が腐敗してきますので鮮度管理も大事になります。
赤・青・緑等の原色に近い色は天然の岩石を細かく砕いた粒子の岩絵具を使用しますといっそう鮮やかになります。
岩石の粒子ですから水に溶けません。膠を溶かした溶液に混ぜ筆ですくって貼り付ける根気のいる作業です。
9.飾り幕
飾り幕の費用は、山車の建造費に匹敵します。
そして、刺繍の芸術の最たるもので、羅紗地に金糸・銀糸・彩糸を織り交ぜ刺繍した飾り幕は絢爛華麗なすばらしいものです。幕の幅・長さを決定し原画から下絵を作成し制作していきます。
10.照明
昼間の山車と違い夜は提灯等の山車を照らします。
夜には祭りも最高潮に達し提灯の明かりは重要な脇役になります。
提灯の取付位置や吊し方等、工夫しだいで夜の姿が一変します。
11.車輪
棒屋と言う屋号で今でも残っておりますが、主として農具等の棒柄を制作・修理する職業の総称です。江戸時代より代々受け継がれてきた職業で、山車の車輪・芯棒・操舵装置等もここで作られてきました。
戦後、急速にそれらの需要が無くなりました。
木材・・・・・羽・輻は乾燥した樫材を使います。
加工・・・・・現寸図を引き型抜きを作り墨付・加工へと入ります。
旋盤加工・・・車輪及び組み上がった羽外周は、旋盤にて円形に削って仕上げます。
芯棒・・・・・樫材にて大小2個の釜金の形状に合わせ遊びの隙間を確保し仕上げます。
焼嵌・・・・・車輪の周囲には、車輪保護の為、厚さ12mm×90mm程度の平網を円形に
溶接し炉の中で焼いた後車輪にはめ、水の中で冷やして収縮させます。
12.養生フェルト貼り
フェルト貼り・・漆塗面を保護する為、接触する箇所には見え隠れ面にフェルトを接着します。
13.仮組立
仮組立・・・・・漆塗りによって多少の厚みの増減がありますので再度仮組立をし
最終の仕口調整をします。
14.包装・梱包
包装・梱包・・・彫刻・漆塗り部材は柔らかい、包装紙で包み傷が付かないように
梱包します。
15.組立
竣工・・・・・・工事完了(現地で組立を行います)
※漆塗り・錺金具・彫刻・彩色・飾り幕等は、各専門業者の施工となります。